「性的同意」とは？　“不同意性交罪の”摘発増加　改めて学ぶ(産経)

相手の同意を得ていない性行為を処罰対象とする不同意性交罪は令和5年の創設以降、摘発件数が増えている。

ただ、加害者側が「不同意とは思わなかった」「同意があった」などと否認する場合も多い。背景にあるのが、性犯罪に関する誤った認識だ。専門家は「正しい知識を持ち、相手を尊重することが必要」と訴える。

◼若い世代に偏見

「女性が男性と2人きりで部屋に入ったら、女性は性行為に同意している」－。こうした性被害に関する誤った考えや固定観念は「レイプ神話（Rape Myth）」と呼ばれている。

米国には性犯罪に関する偏見を測定する尺度があるという。千葉大子どものこころの発達教育研究センターの佐々木利奈特任研究員（49）はその尺度の日本語版開発に携わった。
測定では、レイプに対する誤った考えは、他の世代より18～29歳の若い世代でより広がっていることが明らかになったといい、「（レイプ神話に）違和感を抱いていない可能性がある」と警鐘を鳴らす。

不同意性交事件は第三者の介在がないことがほとんどで、客観的な証拠が見つかりづらい。「相手が明確に否定しなかった」などと主張して、加害側が自身の非を認めないケースは少なくない。　

佐々木さんは「以前の世の中ならこのぐらい許された、という甘えが残る」と指摘。その上で「性加害はいじめの構造と近く、加害意識がゼロという場合はかなりまれだ」と話す。

◼被害申告しやすく

令和5年の刑法などの改正によって脅迫などがなくても不同意性交罪が成立するようになった。
警察庁によると、昨年1年間の不同意性交等事件の認知件数は3936件で前年比45・2％増。摘発件数も3376件で前年比62・9％増となった。同庁は以前よりも被害を申告しやすい環境が作られたことが背景にあるとみている。

警察では、被害者が被害届を出した場合に必ず捜査が行われ、聴取などを経て書類送致や逮捕などの措置をとることになっている。

法改正前は男女トラブルだと思われていた「顔見知りから急に襲われる」といったことが性犯罪として対処されるようになった。

冤罪（えんざい）への懸念の声もあるが、佐々木さんによると、海外の研究では性被害の虚偽申請は10％未満だという。

佐々木さんは「性被害で声を上げることはハードルが高く、相手をおとしめるために行う可能性は、全体としてはかなり少ない」と強調する。

「他の犯罪よりも性犯罪は被害者にも非があったといわれやすい。その背景にもレイプ神話があると考えられる」

◼被害者が責められる

被害者が身近な人に自らの性被害について話した際、「何でついていったのか」などといわれ、二次加害を受けることもある。結果、公的機関や警察などに相談できなくなり、精神的に苦しむ確率が高くなっていることも判明している。
被害者は自分を責める傾向にあるが、自身に起きたことは犯罪で加害側が悪いのだ、と認めるだけでも心が軽くなるという。

「人間関係ができたうえで、お互いが相手を尊重して性的関係を結べば『不同意』にはなりにくい」と佐々木さん。誤った偏見を正すとともに、若い世代を中心に性犯罪の認識を改める教育の推進も急務だと訴える。（前島沙紀）

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性犯罪を巡っては近年厳罰化が進む。平成29年には、110年ぶりに性犯罪に関する改正刑法が国会で可決、施行された。
強姦罪を強制性交罪に変更し法定刑を引き上げたほか、起訴に被害者の告訴を必要とする「親告罪」規定を削除した。従来は被害者が女性に限られていたが、改正法では被害者に男性を含め、性交類似行為も対象とした。

ただ、その後も性被害を巡る裁判で無罪判決が相次ぐなど、被害の実態に合っていないことが浮き彫りになった。

こうした中、令和5年には性犯罪規定を見直す改正刑法などが成立。強制・準強制性交罪を統合して「不同意性交罪」に改称された。

不同意性交罪では暴行や脅迫を用いた性的行為に加え、恐怖で体が動かない場合や虐待、社会的立場に乗じたケースなども想定。相手の同意を得ない性的行為についても犯罪が成立することになった。
性交同意年齢は16歳未満に引き上げられ、盗撮などを処罰する「撮影罪」やわいせつ目的で16歳未満に面会を要求する「面会要求罪」が新設された。

[産経新聞]
2025/3/4 14:00
https://www.sankei.com/article/20250304-22BMOKUCP5IE7JO7P3THBQ7WWI/

めんどくせー世の中になった