【日韓関係の鍵】 稲盛和夫と「キムチの恩人」と呼ばれた韓国人の深い縁

ー前略ー
●　稲盛氏の妻のルーツは 韓国にあった

　報道ベースでも、稲盛氏は何度も訪韓して講演していることが確認できる。

　そのうちの一つを紹介しよう。「短かった3泊4日…拍手喝采の嵐」（ハンギョンビジネス電子版、06年9月4日）だ。そこでは、以下のような記事が掲載されている。

　「稲盛和夫名誉会長は智将であり、高尚な哲学者の一面を存分に発揮し、一方では『経営の達人』にふさわしく経営解法を提示し、時には若者たちに国境を越えた未来ビジョンを気軽に提案した。
自らバッグと原稿を持ち歩くほど気さくな稲盛名誉会長は、いつも笑顔で韓国人たちに深い感動を与えた。
故・禹長春（ウ・ジャンチュン）博士の娘である稲盛朝子夫人をはじめとする一行を周囲に紹介し、韓国に対する並々ならぬ愛情を見せた」

　記事は、稲盛氏の講演が、多くの経営者を熱狂させていることが伝えられているが、注目すべきは、「禹長春博士の娘である稲盛朝子夫人」という記述だろう。
稲盛氏が結婚した（旧姓）須永朝子氏のルーツは韓国にあったのだ。

　「朝子の父親、須永長春（本名禹長春）は東京大学農業実科を出た植物の育種が専門の農学博士で、京都のタキイ種苗の農場長などもしていた。
戦後、実父の故国、韓国へ渡って疲弊していた農業を立て直し、“韓国近代農業の父“と呼ばれた。
私は一度しか会っていない。研究者同士、大いに話が弾んだことを覚えている」（稲盛和夫「私の履歴書」）

　実際に、稲盛氏の韓国メディアの報道にも「彼は『種なしスイカ』で有名な故禹長春博士の4番目の子どもの夫として
韓国との縁も深い」（ハンギョンビジネス電子版、06年9月4日）などと紹介されることが多い。

●　稲盛氏の義父・禹長春が 「キムチの恩人」になるまで

　禹長春の父・範善は乙未事変（李氏朝鮮の王妃・閔妃の暗殺事件）に加わった朝鮮王朝末期の武官だ。日本に亡命し、日本人（酒井ナカ）と結婚、長春が産まれた。
しかし、長春が5歳のときに、父は閔妃を殺害した復讐として暗殺されてしまう。

ー中略ー
●　韓国での稲盛氏の訃報に見えた 日韓の“黒歴史”を乗り越えるヒント

　稲盛氏の死去に際して、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏は、このように述べている。

　「京セラの稲盛和夫さんが亡くなられた。彼はその経営手腕や著書などを通じ韓国でも広く知られていたので、訃報は大きく報じられた。
と同時に韓国では故人の韓国とのことさらの縁も強調されていた。
ほとんどのメディアが見出しで“経営の神様”と称賛するとともに『禹長春（ウ・ジャンチュン）博士の娘婿』と伝えていた」

　「父は日韓近代史の重大事件である閔（ミン）妃暗殺事件（1895年）の際、日本人とともに王宮襲撃に加わり、
事件後、日本に亡命した当時の韓国の改革派軍人だった。後に広島の女性と結婚し禹長春が生まれた」

　「しかし禹範善は韓国では忘れられた人物になっている。王妃殺害に韓国人も加わっていたというのは困るのだ。
日本にとっては今なお尾を引く“痛恨の歴史”だが、裏面にはそんな人物もいたのだ」（「産経新聞」、22年9月3日）

　日本と韓国の間には、度重なる不幸な歴史がある。ただ、現在の韓国の尹錫悦（ユン・ソンニョル）政権においては、親日的ムードが醸成されてきた。
思えば、安全保障上の問題は主に中国、北朝鮮、そしてロシアにあり、地政学的観点からいえば、韓国とは仲良くしておいた方が得な面は多々ある。

　経済、ビジネスともなれば、黒歴史がちらつく長春をも受け入れる大きな度量を、韓国は示すことができる。
稲盛氏が遺した足跡には、過去の怨讐を超えて付き合わねばならない日韓関係のヒントがある。

小倉健一
全文はソースから

DAIAMOND online 5/7(日) 6:02配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/42040efbbcf5ae029413440db7add830dd0107fa

キムチというのは、本来は漬物という程度の意味で、唐辛子が必須なわけじゃない