【社会】 路面電車の安全運行を見守る「鳥の巣」惜しまれながら解体へ　広島電鉄

9/6(月) 18:46 掲載

広島の街を縦横無尽に走る路面電車の話題です。”鳥の巣”と呼ばれ”広電”の安全運行を支えた施設がこの度、取り壊されることになりました。

【野川アナ】
「失礼します・・・おおっ！ここは・・・すごい空間だ。ちょっと言葉が出てこない、時間が止まったような不思議な空間になっています」

電気設備が置かれ、交通の要衝、広島市の十日市交差点を一望できるこの円形の空間…。

【野川アナ】
「隅々までここからよく見えますね」

建物は１９５２年に建てられ、高さ６メートル５０センチの高い場所から顔を出し、鳥の雛のように電車の動きを確認する姿から、広電の社員の中では”鳥の巣”の愛称でも親しまれてきた信号所です。かつては広島市中心部に２か所あり、路面電車の運行に欠かせない大切な役割を担っていました。

これは、その当時、紙屋町交差点にあった信号所での働きを撮影した映像です。

【当時のナレーション】
「ここには信号員が２交代で詰めて、行き先別にポイントを切り替えています。３方向から進入してくる電車は１日１１３４本、信号員は交代できない3時間もの間、気を抜くこともトイレにいくこともできません。だから水分を取りすぎないように気を付けているということです」

こうしたまるで”鳥の目”のような役割は、十日市交差点においても１９５５年まで行われ、職員が双眼鏡などを使って目視で状況を確認し、電車の行き先に応じたポイントの切り替えをしていました。

そんな”鳥の巣”もポイント制御の自動化とともに無人化。

【広島電鉄電車技術部・上田賢治電気課長】
「人がいなくなってしまったんで、ここには機械だけが残ったという形で、耐震性の問題とかもクリアしていない建物ですし、今回、機械が撤去ということもあって、しょうがないのかな、という思いの中の解体」

【通行人は】
「僕はここで十数年仕事をしているが、ずっとここにあるのが当たり前みたいな感じだったので、無くなれば無くなったで寂しいなぁという気がしますけど」

【野川アナ】
「きょう、鳥の巣の周りにも足場が組まれました。まもなく解体作業が始まります。６０年以上この地を見守ってきたその歴史に幕が下ろされようとしています」

”シンボル”は静かにその役目を終えました。

https://www.tss-tv.co.jp/tssnews/000011283.html