【朝日新聞社説】中国の経済　不動産問題　対応を急げ

今の中国経済は、まだ力強さに欠ける。最大の課題は、依然として不動産市場の低迷である。世界経済に多大な影響を及ぼしかねないだけに、習近平（シーチンピン）政権は対応を加速させねばならない。

　１５日発表の経済統計によれば、今年４～６月の国内総生産は事前の予想を下回り、前年同期比４・７％増にとどまった。焦点の不動産では、上半期の開発投資は昨年同期に比べ１０％減り、新築住宅の販売額は２５％も減った。

　政府は５月に対策を打ち出した。銀行融資を受けた地方政府系企業が業者の住宅在庫を買い取り、低所得層向け住宅として供給する、というものだ。最大５千億元（約１１兆円）の融資を想定する。

　それでも好転の兆しは見えない。在庫規模が４兆元（約８７兆円）以上とも推計されるのに比べ、融資の規模が小さい。そもそも住宅需要がある大都市は在庫が少なく、需要が期待できない中小都市で住宅が余っている現実がある。

　過熱していた不動産市場の抑え込みに政府が着手し、大手業者の負債が表面化して、まもなく４年。買い手である多くの一般市民の利害に関わる複雑な問題だが、中国政府のこれまでの対応は鈍かったと言わざるを得ない。

　不動産不況の長期化は消費者を守りに入らせ、景気をいっそう冷やす。買い取りを拡大するなり、損失を確定させるなり、区切りをつける処理が急がれる局面だ。

　一方、投資や生産は比較的堅調だ。政府の設備更新促進策が後押しした面もある。

　輸出は上半期に前年同期比で６・９％も増えた。国内需要が伸び悩む中、自動車や鉄鋼など製造業が輸出ドライブをかけているのではないか。投資が過多で消費が過少という中国固有の経済構造が、さらにバランスを欠いたものとなり、欧米との経済摩擦が悪化しかねない。

　１５日に始まった共産党中央委員会の第３回全体会議（３中全会）は習政権が経済の基本方針を打ち出す場である。不動産問題を含め構造的課題に明確な答えを出すべきだ。

　だが今回、国家統計局は経済統計を発表する恒例の記者会見を開かず、ネット掲載だけだった。３中全会に配慮したとみられる。

　一昨年の共産党大会期間中も経済統計の発表が突然延期された。政治の都合で発表しなかったり発表方法が変わったりというのは中国でも異例のことだ。統計の説明には言葉を尽くし、透明性を高める努力が欠かせない。外国企業を呼び込みたいなら、なおさらである。

https://www.asahi.com/articles/DA3S15984974.html

ホントかよ