南京大虐殺を武勇伝のように語った元兵士。聞き取った神戸の老華僑 「日本が好きだからこそ黙らない」半生はドキュメンタリー映画に

南京大虐殺を武勇伝のように語った元兵士。聞き取った神戸の老華僑が感じたことは　「日本が好きだからこそ黙らない」声上げ続けた半生はドキュメンタリー映画に【戦後８０年連載・向き合う負の歴史（７）】 ｜ 47NEWS
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Published　2025/06/28 09:00 (JST)

「どう殺したか、どれだけの女性に性的暴行をしたか、自慢するように話す元兵士もいた」

怒りを押し56すように語るのは、神戸市に住む在日中国人２世・林伯耀（りん・はくよう）さん（８６）だ。象徴的な戦争犯罪として、南京大虐殺に関わった元日本兵らの証言を集めてきた。

「はやし」と日本風に名乗り、２００人近くを訪ねた。行為を悔やむ人もいた一方で、冒頭のように武勇伝として語る人も。林さんはあえて日本人の仲間にインタビューを任せ、撮影に集中した。そうやって、怒鳴りつけたくなる気持ちを必死に抑えた。

活動がテレビで紹介されると「虐殺はなかった」との抗議が殺到し、林さんを悩ませた。生まれ育った日本で、華僑として過去に向き合うのはなぜか。（共同通信＝石原知佳）

中国天津市でドキュメンタリー映画「老華僑は黙らない（仮題）」の撮影に臨む林伯耀さん＝２０２４年１１月（撮影・江里口暁子）

現在、今年完成を目指し、林さんの半生を追うドキュメンタリー映画「老華僑は黙らない（仮題）」が製作されている。２０２４年１２月、大阪市内で試写会が開かれた。
映画は１９３９年生まれの林さんの人生を追う。生まれ育った京都府の山村の風景。「ひでかず」と日本名を名乗り、地元の小学校へ通っていた幼い頃。近所の子どもから「シナ人」と差別され、いじめられたこともあった。
自分たちと日本人のどこが違うのか、どうしていじめられるのか、幼い心には理由が分からなかった。

両親は中国・福建省出身で、日本に渡ってきた。１９２３年の関東大震災直後に起きた朝鮮人・中国人虐殺から辛くも逃れた経験を持つ。戦時中には親類が、日本で行商をしていたのをスパイと疑われて拘束され、獄中で拷問死した。

▽「日本が好きだから」

自身や一族のそうした経験から、戦争や差別、偏見による被害者のために立ち上がり、寄り添い、社会運動に関わり続けてきた。スクリーンに映し出された林さんは吐露する。「日本が好きだからこそ、黙っていてはいけない」

林さんが関わった活動に、「花岡事件」がある。太平洋戦争末期、秋田県の花岡鉱山で、強制連行された中国人労働者が一斉蜂起し、多数が死亡した事件。戦後、雇用主だった鹿島組（現・鹿島）へ謝罪と賠償を求める運動を起こした。

関東大震災の中国人虐殺で、追悼する会の発足にも尽力した。さまざまな活動の柱の一つが、南京大虐殺の証言収集だ。

▽殺害、性的暴行を自慢する元兵士

現在、インターネットを中心に、南京大虐殺を認めようとしない言説がある。１９８０年代ごろから、被害規模を矮小化するだけでなく、虐殺自体を否定する論争が起こっていた。

林さんの南京大虐殺を巡る取り組みは、１９９７年の「南京大虐殺６０カ年全国連絡会」立ち上げにさかのぼる。南京の現場にいた人々の肉声を記録しようと決め、新聞などで情報提供を呼びかけ、元日本兵の証言を集め始めた。それが記事冒頭の結果だ。
活動は「虐殺はなかった」などの抗議を受け、講演会などで来場者と口論になることもあった。

林さんは自分のことを「本来はおとなしい人間。本当はおとなしくしていたい」という。それでも声を上げ続けるのは、日本にいる中国人として、両国への責任を感じているからだ。
「過去と向き合わなければ、本当の友好は生まれない。日本には過去と誠実に対峙する責任がある。そして被害を受けた中国もまた、痛みや苦しみを伝えて、日本が歴史と向き合えるように助ける責任がある」

（中略）

【戦後８０年連載・向き合う負の歴史（８）】に続く
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これまでの連載
【（１）県が撤去した朝鮮人労働者追悼碑は「加害の歴史」伝えるシンボルだった】
【（２）フェミニズムを入り口に慰安婦問題を学ぶ若者たち―東京、５千人学ぶカフェ】
【（３）集団自決の傷痕撮る沖縄の写真家「真実伝え、戦争なくしたい」】
【（４）うそつき呼ばわりされても、７３１部隊の「本当のことを語る」―９４歳の元少年隊員】
【（５）神奈川の人造湖を造った朝鮮人、中国人。碑が傷つけられても地域ぐるみで語り継ぐ】
【（６）戦争経験継承は未来に向けた責任、「否定論」は実証積み重ね欠く】

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