ＡＬＳ患者から頼まれ殺害、元医師に実刑判決…別の医師と共謀「立場は従属的」

難病の筋 萎縮 性側索硬化症（ＡＬＳ）の女性患者に依頼されて薬物を投与して殺害したとして、別の医師とともに嘱託殺人罪などに問われた元医師・山本直樹被告（４６）に対し、京都地裁は１９日、懲役２年６月（求刑・懲役６年）の実刑判決を言い渡した。川上宏裁判長は「医師の知識を悪用し、犯行に重要な役割を果たしたが、立場は従属的だった」と述べた。

　判決によると、山本被告は医師の大久保 愉一 被告（４５）と共謀。２０１９年１１月３０日、ＡＬＳを患っていた京都市の女性患者（当時５１歳）の自宅で、女性から頼まれ、胃にチューブをつないだ「胃ろう」から薬物を投与し、急性薬物中毒で殺害した。

　検察側は論告で、大久保被告とのメールのやり取りなどから「共謀があったのは明らかだ」と主張。山本被告が現場で見張りをする間、大久保被告が女性に薬物を投与したとした。事件直前には女性から山本被告の口座に計１３０万円の報酬が振り込まれたとし、「社会的弱者の生死を選別し、命の価値を値踏みしてビジネスにすることが横行しかねず、厳罰に処す必要性が高い」と述べていた。

　弁護側は最終弁論で、計画は大久保被告と女性との間で進められ、山本被告が女性の部屋の前で立っていた間に大久保被告が薬剤を投与したと共謀を否定し、無罪を主張した。その上で、共謀が認められるとしても、実行したのは大久保被告で、山本被告の関与はほう助にとどまるとし、執行猶予付きの判決が妥当だとも述べた。

　山本被告は父親（当時７７歳）を大久保被告らと共謀して殺害したとする殺人罪にも問われており、京都地裁で今年２月、懲役１３年の実刑判決を受けて大阪高裁に控訴している。

　大久保被告の裁判員裁判は、来年１月１１日に京都地裁で始まる予定。

読売新聞オンライン
2023/12/19 14:09
https://www.yomiuri.co.jp/national/20231219-OYT1T50139/