経営が苦しくなくても人員削減…「黒字リストラ」するのはなぜ？ 増える50代の退職

業績の悪くない大企業が早期退職や希望退職を募集する「黒字リストラ」が目立ってきた。今年はリストラを公表した上場企業42社のうち、黒字企業は28社と67％を占め、人数では計1万人を超えた。対象を50歳以降とする企業が多く、就職氷河期世代を含む中高年が標的となっている。（市川千晴）
◆「50代以上」を標的に…企業は「成長」のためと説明
「50代以上が最も多く人員構成に偏りがある。黒字だが中国製品の台頭で、絶好調ではない。より安定した成長を続けるには労働力の入れ替えが必要だ」
化学大手三菱ケミカルグループの傘下、三菱ケミカルの担当者は黒字リストラの理由を話した。同社は今月8日、募集していた希望退職に1273人が応募したと発表。対象となった50歳以上かつ勤続3年以上の社員のうち、約3割が応じた。
国内外で計1万人の退職者募集計画を公表したパナソニックホールディングス（HD）の担当者も「昨年度は黒字だが、同業他社と比較すると収益は低い。経営基盤を変えなければ持続的な成長は難しいと判断した」と説明。国内の主な人員削減対象は、勤続5年以上の40〜59歳の社員と64歳以下の再雇用者で、最大数千万円を退職金に上乗せする。
◆上場企業の退職募集人数　全体の8割弱は「黒字リストラ」
東京商工リサーチによると、今月10日時点で、早期退職や希望退職の募集を公表した上場企業数は前年同期比で22％減の42社。ただ、そのうち黒字企業が28社で7割近くを占めた。
リストラの募集人数は計1万2479人で、コロナ禍の2020、2021年を除くと、2012年以来の高水準。そのうち黒字企業での対象人数は9809人と79％となった。
業種別では、電気機器が17社で4割と最も多く、食料品、金属製品、機械、情報・通信が3社で並んだ。三菱電機の「ネクストステージ支援制度」のように、対象を50代の中高年などに絞って、再就職支援と退職金上積みをセットで提供する企業も多い。
黒字リストラの増加について、商工リサーチの本間浩介氏は「大手メーカーのリストラが目立った。国際競争に勝ち残るために、事業転換や付加価値の向上が急務だ。退職金上積みなど黒字だからできる人員削減と構造改革が定着した」と分析。「トランプ関税の影響も続き2026年は、黒字リストラの流れは加速する」と話している。
◆「かつて言われた『転職35歳限界説』はなくなった」(以下有料版で)

東京新聞　2025年12月30日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/459196

国家資格や上位資格が無い場合、退職金上積みの交渉は労働組合次第です。