東日本大地震の被災地にSPもつけずトラック2台分の救援物資を届ける安倍晋三という男

被災者ら哀悼、復興指揮に感謝も　安倍元首相撃たれ死亡
2022年7月9日 6:00

　「東北の復興なくして日本の再生なし」。銃撃され死亡した安倍晋三元首相は、東日本大震災後の第２次政権で何度もこう強調し、震災と東京電力福島第１原発事故からの復興を指揮した。岩手、宮城、福島３県の被災者らは８日、安倍氏との交流を振り返り、哀悼と感謝の言葉を寄せた。

　安倍氏は２０１９年参院選の第一声を福島市飯坂町の果樹園で上げ、原発事故による農作物の風評払拭を誓った。

　果樹園代表吾妻一夫さん（７４）は、安倍氏がモモにかぶりついた姿を今でも覚えている。「『福島のモモ、安全でおいしいんだよ』と太鼓判を押してくれた。福島の復興と再生に懸ける思いが伝わった」と話す。

　大船渡市の水産加工会社社長森下幹生さん（７２）は１５年、震災の津波で被災した後、補助金などで復旧した工場を案内し、安倍氏から「これからも頑張って」と励まされた。

　森下さんは「大変な時期に前を向くことができた。水産業を取り巻く環境は厳しいが、志半ばとなった安倍さんの期待に応えたい」と語った。

　「会場の外に集まった大勢の住民と一人一人、握手して話していた」。石巻市のＮＰＯ法人やっぺす（前石巻復興支援ネットワーク）創立者の兼子佳恵さん（５１）は、安倍氏が仮設住宅を訪れた時の様子を回顧した。「（安倍氏を巡り）さまざまな報道があったが、素晴らしい方だった」と悼んだ。

　１９年には、気仙沼市の市東日本大震災遺構・伝承館で、語り部の中学生と意見交換した。見守った同館スタッフの福岡麻子さん（４４）は「耳を傾ける姿はテレビで見るより優しそうで、帰り際も記念撮影に気さくに応じていた。こんな形で亡くなるとは」と惜しんだ。

　宮城県南三陸町の南三陸商工会長を務める山内正文さん（７３）は「復興に力を貸してくださいとの願いに、いつもしっかり耳を傾けてくれた」と感謝。津波で父親を亡くした岩手県大槌町の会社社長倉本栄一さん（６９）も「強い指導力があった。もっと活躍してほしかった」と無念さをにじませた。
https://kahoku.news/articles/20220708khn000064.html