日本料理の王様、肉じゃがは日本には昭和50年代に定着した？

「肉じゃが」を巡る謎について、三本章著『肉じゃがは謎がイッパイなのだ！　』(2000年　小学館文庫刊)、魚柄仁之助著『国民食の履歴書』(2020年　青弓社刊)などの先行研究が
発表されるようになったのです。

　魚柄氏は各社の料理本を渉猟し、昭和25(1950)年「主婦と生活」誌内の外食券食堂ルポ内に「肉ジャガ」表記を発見します。また、レシピとして「肉じゃが」の表記が料理雑誌に
初めて登場するのは、昭和50(1975)年『主婦の友』12月号付録である、としています。

　三本氏は、昭和50年以降「おふくろの味」見直し運動が始まったことと共に、ファミレス、居酒屋チェーンが拡大していった
潮流の中で「肉じゃが」というネーミングが受けたのではという説を唱えました。

　魚柄氏もまた、昭和59(1984)年朝日新聞の日曜欄に「のみ屋でおなじみの肉ジャガ」という表記があったことから、「肉じゃがという料理名は街の居酒屋あたりで使われ始め、
それがマスコミによって広まったと思われる」と類推しています。

　「肉じゃが」と言えば、あの人=小林カツ代さんじゃないか!?　こう思われた方もいるかもしれません。昭和54(1979)年からNHK『きょうの料理』などのテレビ番組で講師をつとめ、
平成6(1994)年には伝説の料理番組『料理の鉄人』に登場して、「伝説の肉じゃが」レシピで鉄人・陳建一氏に勝利したことでも有名です。

　エッセイストとしても知られる小林カツ代さんの処女作は、講談社でした。ちょうど「肉じゃが」表記が料理雑誌に初めて登場したとされる、昭和50(1970)年発刊の
『ミセス漫画学校へ行く』がそれ。翌年、料理研究家デビューの顛末を書いた『お料理さん　こんにちは』という料理エッセイも続けて講談社から出しました。
その「まんまるコロッケ」という章で、カツ代さんはこう綴るのです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/206f2a240037ec46d299b268438e682a09a4adb4