拉致問題「真剣に考える政治家いるのか、政府は取り戻す気あるのか」「朝鮮総連に厳しい対応を」　吹上浜事件から43年、被害者家族の思い

拉致問題解決へ思いを語る市川健一さん（左）と増元照明さん

拉致問題「真剣に考える政治家はいるのか」　吹上浜事件から43年、被害者家族の思い
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　１９７８（昭和５３）年、市川修一さん＝当時（２３）＝と増元るみ子さん＝同（２４）＝が日置市の吹上浜で北朝鮮に拉致された事件は、１２日で丸４３年を迎えた。２００２年に北朝鮮が拉致を認め、被害者５人が帰国して以降、進展は見えないままだ。昨年９月に菅義偉政権が発足し、４月の日米首脳会談で拉致問題の即時解決方針が再確認されたものの、家族の高齢化は一層進み、新型コロナウイルス下で関心の低下も懸念される。再会を待ち望む市川さんの兄・健一さん（７６）＝鹿屋市輝北＝と、増元さんの弟・照明さん（６５）＝東京都中央区＝に、現在の心境や政府への要望を聞いた。

■市川健一さん

　－４３年目の夏だ。

　「毎年この時期を過ごすのがつらい。実家のスーパーの開店セールを手伝いに仕事を休み来てくれた両親思いの弟と、その１２日後、ぷつりと連絡が取れなくなった。修一を思い出さない日はないが、特に８月は、早く帰りたいだろうに助けられず申し訳ないとの気持ちでいっぱいになる」

　－昨年９月、安倍晋三前首相が辞任し、菅政権に代わった。

　「拉致問題と懸命に向き合ってくれた安倍さんの元で長年官房長官を務めただけに、菅首相もしっかり考えてくれていると思う。国民が突然連れ去られ、今も帰国できないのは重大な人権と主権の侵害だ。北朝鮮には国際社会の常識が通用せず、突破口を開くにはトップ同士が話をするしかない。米国の協力を得て日朝首脳会談を実現させ、主権国家の証しを示してほしい」

　－衆院選が近づく。

　「拉致問題を真剣に考えている国会議員がどれだけいるか。国会や選挙活動で取り上げる場面もほとんど見ない。国には国民の生命と財産を守る責務があり、その代表が国会議員。票になるかどうかでなくもっと誠実に取り組んでもらいたい」

　－４月には塩田康一知事と初面会した。 　「知事は静かに話を聞き、ブルーリボンのバッジを着けてくれるようになった。全国知事会での働きかけなど今後も自身の発信力を生かし支えてほしい」

　－コロナ下で講演や署名活動が思うようにできない。

　「夏祭りや催しの中止が相次ぎ、署名活動は４月に一度やったきりだ。拉致問題を忘れず関心を寄せてほしいとの思いで活動を続けてきたが、それが途絶え、忘れられてしまうのが一番怖い。世論の高まりが政府や北朝鮮を動かす。歩みを止めるわけにはいかない」

　－拉致被害者５人が帰国し来年で２０年だ。

　「近い将来に全員が帰ると期待したが、あれから１９年、誰一人として帰国を果たしていない。その間、息子を待ち続けた両親も旅立った。悔しく、憤怒の思いだ。私たちには本当に時間がない。被害者全員の即時一括帰国のため、闘い続ける」

■増元照明さん

　－４３年目の夏を迎えた。

　「被害者５人が帰国した２００２年以降、この１年を含めて何も進展していないといっても言い過ぎではない。署名活動を毎月続けているが、時々『いまだに何でこんなことをやっているんだ』と悲しい気持ちになる。一方で拉致をテーマにした映画や演劇を見たという若い女性たちの協力が増えてきており、救いになっている」

　－新型コロナウイルスの影響は北朝鮮でも深刻ではないか。

　「感染が拡大していないとの主張を額面通りに受け取れない。衛生環境や医療施設が整っておらず、コロナに苦しむ日本人被害者もいるのではないか。食糧事情の悪い中での長期生活で、基礎疾患を患う人も少なくないはずだ。重症化の懸念もある。一刻も早い帰国が必要だ」

　「コロナを巡っては国境封鎖による経済難、ワクチン対応で一部幹部が処分されるなど金正恩体制にほころびも見える。状況が動いている今こそ、日本政府は『被害者の帰国なくして解決なし。国交正常化もあり得ない』との姿勢で揺さぶりをかけてほしい」

　－菅政権は９月で発足１年を迎える。

　「東京五輪やコロナ対応に追われ、拉致問題の優先度は低いように感じる。政府は本気で被害者を取り戻す気があるのか、見えてこない。北朝鮮政府と関係が深いとされる在日本朝鮮人総連合会（朝鮮総連）に厳しく対応できるはずで、北朝鮮に打撃を与える制裁や圧力を強めるべきだ」…
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