【読売新聞】＜Ｇ７広島サミット２０２３＞尹大統領　政府が招待検討

韓国人被爆者に関心を
　５月１９～２１日に広島市で開かれる先進７か国首脳会議（Ｇ７サミット）で、政府は韓国の 尹錫悦ユンソンニョル 大統領の招待を検討している。原爆では多数の朝鮮半島出身者が犠牲になったが、韓国の現職大統領の広島訪問は一度もなく、関係者からは「サミットを韓国人被爆者への関心を高める機会にしてほしい」との声が上がっている。（大槻浩之）

関係者ら「調査進めて」

　広島では原爆投下前、多くの朝鮮半島出身者やその家族が、工場労働者などとして居住。出征した日本人男性の代わりに働いていた人もいたため、戦前より多くの人が住んでおり、中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」でも描写されている。

　朝鮮半島出身者の被爆者や犠牲者の正確な人数は分かっていない。被爆後の混乱期に帰国した人が多く、創氏改名で日本名の記録しか残っていないなどの背景がある。韓国原爆被害者協会は１９７２年、３万人が死亡したと推定する一方、広島、長崎両市が７９年に発行した「広島・長崎の原爆災害」には被爆直後の死亡者数について「５０００～８０００人の範囲と推測される」との記載がある。

　韓国民団県地方本部（広島市東区）で原爆被害者対策特別委副委員長を務める被爆２世の 権俊五クォンジュノ さん（７３）（同市西区）は「朝鮮半島出身者の住環境は日本人より悪く、爆心地から同じ距離でも、より被害は大きかった」と指摘する。

　在韓被爆者の支援や被爆者健康手帳の取得を求めて裁判を行ってきた「韓国の原爆被害者を救援する市民の会・広島支部」支部長の中谷悦子さん（７３）（廿日市市）は「大統領の広島訪問が実現すれば、それを機に政府主導で実態調査を進めてほしい」と期待する。
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　韓国大統領の広島訪問は一度もなく、政府要人も９０年に訪日中の 盧泰愚ノテウ 大統領の特使として派遣された外交安保補佐官にさかのぼる。

　コロナ禍前の２０１９年の観光庁調査によると、県内に宿泊した外国人に占める韓国人の割合は３・４％と低い。権さんによると、韓国にとって日本は加害国としての認識が強く、日本の被害を強く描写する広島に対しては複雑な受け止めがあるという。要人の広島訪問のハードルそのものが高い上、日韓関係の悪化なども影響したとみている。

　権さんは「過去のわだかまりを乗り越え、原爆で多くの犠牲を出した日韓の首脳が被害に思いをはせる機会が今回のサミットで実現してほしい」と願う。中谷さんも「被爆者の声を聞き、核兵器廃絶に向けたメッセージを出してほしい」と求めている。
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　サミットではＧ７首脳以外に、議長国が選ぶ招待国も参加する。５月のサミットでは韓国のほか、オーストラリアやインドの招待も検討されている。１６年の伊勢志摩サミットではインドネシアやチャドなどアジアやアフリカの７か国が参加。韓国は０８年の北海道洞爺湖サミットで招待されている。

　広島市立大の 金栄鎬キムヨンホ 教授（政治学）は「韓国政府もサミットに招待されれば、韓国人被爆者への言及を検討するだろう。実態調査は難しいかもしれないが、日韓両政府が何らかの象徴的取り組みを実施することは期待できる」と指摘する。

2023/02/05 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/local/hiroshima/news/20230204-OYTNT50234/

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