【社会】 いつも名前は夫→妻、それでいい？　コーヒー店営む2人の願いとは

栗林史子2022年3月8日 16時30分

　雑誌などに掲載する際は「妻→夫」の順番で名前の掲載を――。メディアにこんなお願いをしているコーヒー店夫妻、いや妻夫がいる。従来の「夫が主で、妻が従」というステレオタイプにあらがい、身の回りからジェンダーギャップを減らそうとしている。

　京都府大山崎町の「大山崎COFFEE　ROASTERS」は、雑誌などにたびたび登場する人気のコーヒー豆焙煎（ばいせん）所だ。店主の中村まゆみさんと中村佳太さんは2月、こんな依頼文を作り、取材を依頼してきたメディアに渡すことを決めた。

　▽共同経営をしています。「店主」は2人を指し、どちらか一方が代表しているわけではありません

　▽名前を掲載いただく時は、「中村まゆみ・中村佳太」の順で掲載をお願いします

　▽取材中は「ご主人・旦那さん」「奥様・奥さん」といった呼び方は控え、名前でお願いいたします。すぐに名前を覚えるのが難しいこともあるので、何度でも名刺を確認していただいて大丈夫です

　▽メディアの皆様は、取り上げるコーヒー店のオーナーや焙煎家、バリスタなどのジェンダーバランスを確認し、偏らないよう取り組みをお願いします。この点を理由に、男性が焙煎している弊店を取材対象から外す場合、喜んで承諾します

　2人がこんなお願いを出したのは、共同で事業を営んでいるにもかかわらず、「夫である佳太さんがメインの経営者」ととらえられることがあまりに多かったからだ。

　取材者が名刺を渡したり、銀行などの営業担当者が話しかけたりするのは、まゆみさんではなく佳太さん。まゆみさんが電話に出ると、佳太さんを出すよう言われることも多かった。
佳太さんは「2人で話しているのに、僕の目しか見ないで話す人も多い」と話す。2人で店を始めることを決めたにもかかわらず、「夫がやりたいと言い、妻が許した」という前提で取材されたこともあった。

https://www.asahi.com/articles/ASQ373JXNQ2QPLFA002.html