【沖縄タイムス/社説】［北京冬季五輪開幕］平和の祭典　揺らぐ理念

　北京冬季五輪が、きょう開幕する。開催国の中国で起きている人権問題を巡る「外交ボイコット」の動きが参加国に広がり、競技より政治的摩擦がクローズアップされる異例の大会となった。

　新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るうタイミングでもあり、夏季五輪に続き、開催の在り方そのものが問われている。

　外交ボイコットの口火を切ったのは、米国だった。

　少数民族ウイグル族への弾圧を理由に、政府当局者を派遣しないと表明し、英豪加などが同調した。日本も閣僚や政府高官を派遣しないと決め、事実上、追随している。

　中国は香港でも民主派の排除や、報道機関への圧力を強めている。欧州連合（ＥＵ）の欧州議会は香港の人権状況を理由に、北京五輪へ外交団を派遣しないよう求める決議を採択した。

　日本国内でも衆院本会議で、新疆ウイグル自治区や香港などの人権問題に懸念を示す異例の決議が、賛成多数で採択された。名指しは避けたが、中国を念頭に置いているのは明らかだ。

　中国の習近平国家主席は、３期目を狙う共産党大会を今秋に控え、大会の成功が最重要課題となっている。

　五輪を国威発揚の機会にしたい中国と、対中包囲網を敷きたい米国中心の連合による政治対立が、競技への関心をかすませている。

　「人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てる」という五輪憲章の理念に、国際政治が影を落としたまま開幕を迎えてしまった。

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　コロナ禍の五輪は、感染拡大も懸念される。

　中国入りする選手らは入国前後に、合計３回のＰＣＲ検査で陰性証明を求められる。

　滞在中も全員に１日１回の検査を義務付けるなど対策を講じているが、開幕前の１日時点で、すでに５０人以上の陽性が報じられている。

　感染防止のため、施設間の移動も最小限に制限される。国を越えた選手同士の交流や、地域住民との触れ合いもままならない状況だ。

　コロナ対策の徹底に乗じて懸念されるのは、選手への「監視」だ。米英など７カ国が、中国の通信回線を通じた個人情報の抜き取りや行動監視を警戒し、自国選手に私用スマホを持ち込まないよう呼び掛けている。

　米国の専門家は、健康状態を申告するための五輪公式アプリのインストールも、不正アクセスの恐れがあると警告している。

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　政治色が強まり、ホスト国への疑心暗鬼が広がる中、競技に集中できるのか。国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）と中国は、選手たちが日頃の練習の成果を発揮できる環境を整えてきたか、改めて問われる。

　日本勢はフィギュアスケート男子で３連覇を目指す羽生結弦選手や、スピードスケート女子で５種目出場予定の高木美帆選手らの活躍が期待される。

　コロナ禍という制約の中でも場数を踏んできた選手たちが、能力を発揮すると信じ、躍動する姿を見守りたい。

沖縄タイムス 2022年2月4日 07:12
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/905336