【東京五輪】競泳・大橋悠依を金に導いた「平井マジック」　北京五輪の北島にもかけた名将の“金言”再び

◆東京五輪　競泳女子４００Ｍ個人メドレー決勝（２５日・東京アクアティクスセンター）　

　日本記録保持者の大橋悠依（イトマン東進）が、初出場の五輪の舞台で輝いた。４分３２秒０８で優勝。今大会、日本競泳陣最初のメダルは金色で、レース後の大橋は「金メダル取るなんて思っていなかったので、うれしい気持ちと、不思議な気持ちでいっぱい」と涙をながした。

　レース直前、緊張を隠せなかったという大橋。ここで、過去に北島康介や萩野公介ら五輪メダリストを輩出してきた平井伯昌コーチの「平井マジック」が発揮された。「先生にも『緊張してます、緊張してます」って言っていたけど、招集所に行く前に『とにかく順位もタイムも気にしなくていいから、自分のできること全部やれば大丈夫』と言っていただいた。それで自分のペース、レースをすることだけを考えて入場できました」と、大橋は平常心を取り戻したという。

　師弟の戦略もハマる。決勝は、午前の時間帯。前日午後に行われた予選よりも、体は動きにくくなる。「最初の２００Ｍを昨日より早く入ろうと思っても、エネルギーを使うだけでそこまでタイム的には変わらないという風に先生とも言っていた」。リラックスした大きな泳ぎで、前半を折り返す。「バックブレ（２００Ｍ）をターンした所からが勝負で、そこからギアを切り替えていくというのは決めていた」。３種目目の平泳ぎでリードを広げ、最後の自由形で逃げ切った。

　平井コーチと言えば、２００８年北京五輪で北島に伝えた言葉が記憶に新しい。２連覇を目指していた１００Ｍ平泳ぎの決勝。予選、準決勝で五輪新をマークし勢いに乗っていた伏兵・アレクサンドル・ダーレオーエン（ノルウェー）との対決を前に、平井氏は「勇気を持って前半は、大きくゆっくり行け」と指示した。１００Ｍという距離で大胆な作戦。ただそれを忠実に実行した北島は、５０Ｍターン後の浮き上がりからリードを奪い、世界新記録樹立につなげた。

　大橋の金メダルまでの過程には、多くの支えがある。その中でも、「やっぱりレース前に先生からかけてもらった言葉が、一番自分にエンジンをつけてくれたというか、よし行くぞという気持ちにさせてくれた。周りの選手も『平井先生は五輪に強いから、絶対信じて大丈夫だから』と言っていたので。自分も信じてこれてよかった」と大橋は言う。レース後、平井コーチは「本当、うれしいですよ。本当、よく頑張ってくれたと悠衣に思うし、オレもよく頑張った。報われた」と感無量の様子だった。

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