【国連】「暴力の即時停止を」　安保理、アフガン情勢で報道声明

【ニューヨーク=白岩ひおな】アフガニスタンの情勢緊迫化を受け、国連の安全保障理事会は16日、緊急会合を開き「暴力の即時停止と秩序の回復を求める」との報道声明を出した。アフガニスタン人による平和的解決を図るための協議をただちに行うよう要請し、女性が平等に参画する包括的な新政府の樹立を求めた。

国際人道法や人権への侵害が深刻化していることに「深い懸念」を示し「加害者を裁くことが緊急かつ不可欠だ」と強調した。イスラム主義組織タリバンをはじめとする全当事者に、すばやく安全な人道支援のアクセスを妨げないよう訴えた。アフガンの領土がいかなる国の脅しや攻撃、テロの支援にも使われないよう、テロとの闘いの重要性を改めて確認した。

報道声明は安保理が報道機関向けに出す声明だ。国連加盟国に対し法的拘束力はないが、理事国15カ国の合意で出すことができる。

安保理会合では、グテレス国連事務総長が演説で「国際社会が一丸となり、アフガンが二度とテロ組織の温床として利用されないようにしなければならない」と語った。すべての国に対し、アフガン難民を積極的に受け入れ、いかなる強制送還も行わないよう促した。「アフガンの女性や少女への人権侵害が深刻化しており、暗黒の時代への逆戻りを懸念している」とし、人権と自由の尊重を強く要請した。

会合では、タリバンによるアフガン制圧をめぐり、駐留米軍の撤収決定の責任を問う声も上がった。中国の耿爽次席大使は「アフガンの混乱は外国軍の性急な撤収に直接関連している」とし、8月末までにバイデン政権が進めている米軍の撤収を批判した。トーマスグリーンフィールド米国連大使は、バイデン大統領が「人員や任務を危険にさらす行為には、迅速かつ強力な軍事的対応をとると明言している」と明らかにした。

議長国のインドの承認で出席したアフガニスタンのイサクザイ国連大使は「（タリバンが）武力によって獲得したものを政権として承認しないよう強く求める」と国連と各国に訴えた。英国のジェームズ・カリウキ次席大使は「タリバンが基本的人権を侵害し続けるなら、アフガンの人々や国際社会は正当性を認めないだろう」と応じた。

フランスのブロードハースト次席大使は「暴力や人権侵害を断固として非難する」と述べ、即時停戦を求めた。ロシアのネベンジャ国連大使は「存続しているテロの脅威を懸念する」とし、すべての当事者に平和的な解決を図るよう要請した。緊急会合は安保理の非常任理事国であるノルウェーとエストニアが要請した。

日本経済新聞　2021年8月16日 23:35 (2021年8月17日 5:19更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16B870W1A810C2000000/