「誰もがカスハラの加害者になり得る」　「連合東京」初の女性会長・斉藤千秋さんが訴えた実態と改善策

東京都内の勤労者125万人で組織する「連合東京」で女性初の会長に就任した斉藤千秋さん（55）が本紙のインタビューに応じた。重点的な取り組みとして、働く人が客から暴言などの嫌がらせを受ける「カスタマーハラスメント（カスハラ）」防止策の強化を挙げ、「働く人々が受ける精神的苦痛は計り知れないものがある。改善を図りたい」と意欲を示した。（三宅千智）
　斉藤千秋（さいとう・ちあき）　1967年、東京都出身。法政大卒。91年、日立製作所に総合職として入社。日立労組本社支部執行委員長、電機連合東京議長、連合東京事務局長などを歴任し、2023年10月より現職。家族は夫、大学2年の長男、高校2年の長女。趣味は映画・ドラマを見ること、カラオケ。

◆「ないなら店を辞めてしまえ」「税金泥棒」
―なぜカスハラ防止に取り組むのか
　新型コロナウイルス禍のストレスも重なり、働く人が悪質なクレームで辞めたり、メンタルヘルスに不調を来したりするケースが相次いでいる。私たちが把握している実態は、レジの接客が悪いと胸ぐらをつかまれ引きずり出されたとか、直近の薬の供給不足を巡って「薬がないなら薬局をやめてしまえ」と暴言を吐かれたとか。公務員も「税金泥棒」など言いがかりを付けられる被害に遭っている。
―カスハラが起きる背景は
　ストレス社会で、誰もが消費者としてカスハラの加害者になる可能性を秘めている。どこまでが正当な申し出で、どこからが嫌がらせになるのか、線引きがグレーなところもある。条例などの法的な枠組みにより防止することが有効だと考えている。
◆「UFOキャッチャーのようなものでたまたま会長に」
―組合活動に関わるきっかけは
　（クレーンゲーム機の）UFOキャッチャーのようなものでたまたま選ばれた。元気の良さが買われたのだとは思う。1998年に日立労組本社支部の執行委員になり、気が付いたら25年間、組合活動に従事している。社員用の託児所設置など、女性が働きやすい職場にしたいという思いで取り組んできた。
　連合の芳野友子会長をはじめ、他の産別組織のパワフルな女性たちにも力をもらった。「取りあえず女を出しておけば良い」という位置付けのままではいけない。自分たちが考えて何かを動かしていく、そんなムーブメントをつくれるような立場になっていかないと、と思うようになった。
◆「反自民、非共産」という筋は共闘の中でも守らねば
―次期衆院選への対応は
　現在調整を進めている。立憲民主党、国民民主党の候補者が重なる選挙区はどちらも応援しない。野党が大きな固まりをつくらないと勝てない。一方で連合は「反自民、非共産」という考え方で結成した団体。そこの筋は共闘の中でも守らなければならない。組合員に「誰に投票したら良いのか」と聞かれて答えをつくれないことのないよう、推薦などの議員がいない「空白区」をゼロにしたい。
―来夏には東京都知事選が控える。前回選挙で支持した小池百合子知事の評価は
　小池知事とはこれまで連携を取ってきた。連合東京の要望にも積極的に予算を付けていただき、新型コロナ禍の雇用対策にも取り組んでもらっている。

東京新聞　2023年10月31日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/286936