【ニュー速＋キッズ集まれ】愛知県のリコール署名不正から地方自治のしくみを学ぼう　【子供向け解説がお前らにピッタリ】

■署名偽造、なめられた民主主義
（中略）
リコールは2019年に開かれた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で昭和天皇を扱う作品や慰安婦を表現した少女像などの展示をめぐって、
「ふさわしくない」という抗議電話が殺到したことがきっかけです。大村知事は芸術祭の責任者ではありますが、
議論が分かれる展示内容の是非について知事の解職まで求めることにはもともと無理があったように思います。
それでもリコールが始まったのは、この問題を大きくしたいという政治的な思惑や、大村知事と関係が悪化しているといわれる名古屋市長の肩入れがあったためとみられています。

リコールは公職に就く人が不適格、あるいは無能という声が強く上がった時に行われます。
愛知県の場合はそうした県民の声が多数上がったというより、別の思惑が大きかったというところに事件が起きる下敷きがあったと思います。

リコール運動団体の会長には美容外科の院長でテレビCMなどにも頻繁に登場する人が就き、記者会見や街頭には有名作家やタレントなども参加し、
大々的にスタートしました。しかし、多くの県民は白けていたようで、思ったように署名は集まりませんでした。
そこで、驚くことがはじまりました。広告関連会社に委託して愛知県から遠く離れた佐賀県でアルバイトを集めて別の住民リストから署名簿に書き写させました。
偽造です。印鑑を用意することはできませんので、印鑑欄には運動関係者たちが指を真っ赤にして指印を押したそうです。

しかし、結局、必要な約86万7千筆には届かず、約43万5千筆を選挙管理委員会に提出しました。
どうして成立しないリコールのために大規模な偽造までしたのか。動機はまだわかっていません。

また、逮捕された4人以外にも事件に深くかかわった人がいる可能性がありますが、それもまだよくわかっていません。
今のところ、田中事務局長が逮捕前に新聞記者に「会長に恥をかかせられなかった」と話しているのが唯一の動機らしいところです。

単純に考えると、
(1)リコールに必要な署名を集めるのは無理と判断
(2)しかしできるだけ多くの署名数にして知事にプレッシャーはかけたい
(3)リコールが成立しなければ選管は署名簿の中を見ないで返してくれるはず
(4)お金はある
(5)よし偽造しよう、という思考経路が予想できます。

■選挙とセットで民意を反映

ここで、地方自治法で定められているリコールについてもう少し詳しく説明します。
地方自治は戦後民主主義の柱の一つです。戦前の日本は中央集権的な国でした。

しかし、戦争で負けてアメリカの民主的な考え方が入り、地方のことは地方で決めることになりました。
のため、都道府県知事、市町村長、地方議会議員などが20歳（今は18歳）以上のすべての男女を有権者とする普通選挙で選ばれることになりました。
しかし、選ばれれば何をしても任期中はやめさせられないのでは、住民の意思に反することが行われた場合、手立てがないことになります。

そこで、リコールの制度が導入されました。つまり、リコールは選挙と裏表の関係にあり、ふたつそろって民意が反映されることになります。

具体的には、都道府県知事、市町村長、地方議員、副知事や副市長村長などの地方役員がリコールの対象になります。
リコールが成立するには有権者の3分の1以上の署名を得て選挙管理委員会に請求し、署名が有効なら請求から60日以内に住民投票が行われ、過半数の賛成で失職となります。
リコールは地方議会の解散を求めることもでき、こちらも手続きは同じです。

（中略）
イギリスにウィンストン・チャーチルという首相がいました。この人はたくさんの名言を残しています。
そのひとつに「民主主義は最悪の政治形態らしい。ただし、これまでに試されたすべての形態を別にすればの話だが」というのがあります。
確かに民主主義は手続きに手間や時間がかかります。しかし、誰かの一声で社会が動くような政治形態が悲惨な社会を招くことは歴史を勉強すればわかります。
民主主義の手続きをないがしろにしたりごまかしたりすれば、民主主義は壊れてしまいます。
愛知県で起こった事件は小さな事件のように感じるかもしれませんが、民主主義を壊す一歩となりうるとても大きな事件だと思います。

https://news.yahoo.co.jp/articles/74e0466e579e481a4fa53027588d749bcbed5c2f?page=1